ハンター(Hunter)さん (JRA美浦トレセン 某厩舎所属 調教助手)
埼玉県生まれ。 約7年の海外生活を経て、2006年8月に日本に帰国。
JRAの厩務員課程試験に見事合格し、美浦トレセンにて調教助手として活躍中。
私が英語力の必要性を感じたのは、外国で競走馬の仕事の勉強をしたいと思い、オーストラリアに留学したときでした。
高校3年まで将来やりたいことが見つからず、進路にも悩んでいたのですが、オーストラリアに競走馬に関わる仕事をしたい人のための専門学校があるのを知り、これだ!と思いました。
学校など行かなくても、まして海外など行かなくても、日本の牧場などで競走馬の勉強や仕事はできます。 しかし海外の競馬と日本の競馬は見ていても全く違います。 当然そこにはやり方や考え方の違いがあると思いました。 また、海外の競馬に憧れもあったのでしょう。 若いうちに出来るだけ感じたり吸収したいと思いました。
それと、当時は、無気力な自分が嫌いだったので、違う世界で自分自身を変えないといけないと感じていました。
そして、オーストラリアへ留学を決意。
ちょうどその頃、乗馬をしていたので馬への魅力はありましたが、将来、馬と一緒に仕事をしようなんては思っていませんでした。
高校まで習ってきた英語は、苦手でしたが成績は悪くありませんでした。 しかし、実際にオーストラリアに行って、現地の人と話そうとすると、全く話せませんでした。 言いたいことも言えないし、相手が何を言っているのかも分かりませんでした。
日本の義務教育で習う英語は、受験のための英語で、実践で役立つ英語ではありませんでした。それは海外で身をもって感じてきたことです。 実際に、日本人が「義務教育の英語」だけを習得して海外に行っても、ネイティヴスピーカーとはほとんど話せないのが現実でしょう。
その後、留学先の学校の授業や、ホームステイのあたたかい家庭での会話、そしてまわりの一般人と話す努力などの効果から、私の英語力は少しずつ上達していきました。 授業も大事ですが、やはり積極的にいろんな人と話すことは重要だと思います。 最初は、英語も喋れないのか?通じないのか?とけげんな顔をされることもあって悔しい思いもしました。 しかし、人々がよく使う英語の言いまわしを聞き覚えて、それを真似して使えばいいのです。 日本語を英語に直訳して言うよりも自然に会話ができます。 慣れてくるとだんだん人の言ってることも分かってきます。
それと、テレビを視聴することも良い勉強になりました。 ニュースは早口でついていけませんでしたが、アニメだと声優がわかりやすく話してくれます。 そこで覚えたおもしろいジョークも会話で使えることができます。 「The Simpsons」 は私のオススメです。 頭の中でいちいち文章を作らないで、パッと言葉が出てジョークで笑わせることができたら最高ですよね。
せっかく英語が話せるようになり、他国の調教にも興味があったので、次はアメリカに働きに行きました。
もちろん、私の英語は完璧ではありませんでした。 仕事の話をうまく説明できないこともありました。 そのため、言葉ではなく、結果で認めさせようと思ったので、辛いことも頑張れたのかもしれません。 しかし、もっとうまく話せたら、もっと仕事がうまくいってたかもしれないとも思っています。
アメリカでの生活は楽しくて充実したものになりました。 最初は日本で働くための経験を積むために海外に渡ったはずでしたが、次第に一生海外で暮らしていこうと考えるようになってきました。
アメリカでは実力が全てです。 実力があれば認めてもらえる世界で、誰にでもチャンスをくれます。 日本で同じ仕事に就くには、狭き門の職業訓練学校の試験に合格し入学、卒業しなくてはなりません。 年齢制限や体重制限まであります。 しかし無事に仕事に就くことができればもう安心です。 守られます。 ですから、年齢制限内までに合格できるのとできなかったのでは大きな違いがあるのです。 その段階で勝者と敗者が決まってしまうわけです。 よく日本の学校は入学が難しく卒業は簡単、アメリカの学校は入学は簡単で卒業が難しいと聞きますが似たようなシステムかもしれません。
こういう若い芽を潰してしまうような、挑戦する前にあきらめざるをえなくなる日本のシステムに疑問を持つようになりました。アメリカのほうが夢を追って生きていける。そこに魅力を感じました。
しかし、日本にも、私の実力とそれまでの海外での経験を認めてくれる人がいて、「一緒にやっていこう」と誘われ、とても嬉しかったので、結局は日本に落ち着くことにしました。 現在、日本で仕事をしておりますが、海外で得た skill, experience, そして friends はかけがえのない私の財産です。 英語力を身につけなければ、これらは得られませんでした。
今の生活に英語は必要ありません。 しかし強い馬を担当して調教し、いつか海外遠征して有名なレースに勝つことが夢なので、その時にまた英語力が役立てればいいなと思ってます。
英語は人生の可能性を広げる上で本当に必要なものです。 私の場合は競走馬の仕事でしたが、英語を通して素晴らしい経験を得ること、そして、日本という小さな枠だけでなく、世界という大きな舞台で自分の無限な可能性を試してみること、それが英語を身につける本当の意義なのではないかと思っています。